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藤井ユーイチ(スターダスト)、「私立恵比寿中学”校長”としてみた アイドルシーンとマネジメントのこれから」を語る。アイドルLOUNGE オフイベントVol.7レポート

2017/09/07 に公開

※Vol.8と記載していた箇所をVol.7に修正しました。

2017年8月21日、東京・六本木にて「アイドルLOUNGE オフイベントVol.7~これからのアイドルマネジメントに求められるもの~」が行われた。

アイドルシーンについて、ここでしか聞けないトークを展開するアイドルLOUNGE (https://lounge.dmm.com/detail/186/)

今回は、トップアイドルを擁して現在のアイドルシーンを黎明期から見てきたマネジメント責任者から話を伺うことになった。

ゲストには、私立恵比寿中学、そして桜エビ〜ずを担当しファンからの支持も強い、藤井ユーイチ(ふじいゆーいち)氏を招き、アイドルコンテンツプロデューサー濱田俊也氏のコーディネートでトークが展開された。

~藤井ユーイチ(ふじいゆーいち)氏(株式会社スターダストプロモーション芸能3部)~
私立恵比寿中学マネージャー。大学卒業後、2003年株式会社ヒロプロダクション入社、2004年〜2006年JVCエンタテイメントネットワークス株式会社を経て2007年1月より株式会社スターダストプロモーションへ。営業を経て2010年〜私立恵比寿中学の担当マネージャーになる。

~濱田俊也(はまだしゅんや)氏(アイドルコンテンツプロデューサー/アイドルLOUNGEコーディネーター)~
アイドルフェス・ライブ・ファンクラブ・映像配信・ゲームなど様々な取組のプロデューサーや責任者をこれまでつとめてきた。


▼私立恵比寿中学、桜エビ〜ずの2017年夏

濱田:私立恵比寿中学(エビ中)さんは、毎年夏は@JAM EXPOさんには出ておられますけれども、TOKYO IDOL FESTIVAL (TIF)は、今回のTIF2017が久々のご出演でしたね。

藤井:ずっとワンマン中心に活動をやっていると、メンバーもスタッフも刺激が欲しくなります。また、アイドルフェスに出ると“自分たちのポジション”が明確になって本人たちのモチベーションが上がったり、フェス自体を楽しめることもあります。また、しばらくエビ中を見ていなかった人たちにもエビ中を見てもらいたいという思いもありまして、今回久しぶりにTIFに出演させて頂きました。
TIFには、過去に、“ももクロ(ももいろクローバーZ)のおまけ”でしかなかったエビ中を出してくれた事をとても感謝していますし、アイドル業界がこれほどビジネス的になる前からお世話になった方々には積極的に恩返ししたいな、という想いもありまして。

とはいっても、僕はエビ中以外にも携わっているので久々な感じはなかったのですが(桜エビ~ずは2015年以来連続してTIFに出演)。

今年のTIFでは、エビ中は野外になったHOT STAGE(メインステージ)で良い時間に出させて頂きました。
今回エビ中は機会はなかったですが、メンバーは皆SMILE GARDEN(野外大ステージ)をやりたがるんだな、というのが出演して印象的な事の一つでした。無料エリアなので沢山のお客さんに見てもらえるのでは?という思いがあるようです。

桜エビ~ずはお披露目がTIF2015だったんですが、それ以来「なんでもやろう」というスタンスで、コラボステージも立っていますし色々やっていますね。

濱田:TIFチームには「エビ中さんに戻ってきて欲しい」という想いがずっとありましたので、出演して頂けた事は本当に大きかったと思います。「エビ中をTIFで見れて良かった」という声がとても多く、TIFではめったに見ないアンコールもあって(笑)、すごく盛り上がりました。

そしてこの夏は、SIF(しがこうげんアイドルフェスティバル。8月5日開催)もありましたよね。

藤井:「SIFってなんだよ」って最初は思いましたね(笑)。発表された時に、志賀高原に宿を取ったファンの人もいるみたいで(笑)。その人の勇み足かもしれないですけど、そういう変なネーミング(イベント名)を付けたがる人もいるので気を付けてください(笑)。

濱田:(笑)。藤井さんとして、特にご自分の担当のアイドルについて、「2017年、あるいは2017年夏はこうしたい、こうなりたい」というのはあったのですか?

藤井:自分たちだけでイベントをやっていても成立はするのですが、今年は、よりたくさんの集客を得る為、そして楽曲の幅も広げる為に、いろいろなイベントに出て行こうとしてきました。

また、今年は特に多めにライブを組んできました。
この後、ファミえん(エビ中のファミリー遠足 略して ファミえん。8月26日開催)というイベントがあるので、それを成功させるために頑張っていきたいと思います。その後も色々あるんですが、また追って発表したいと思います(笑)。




▼私立恵比寿中学のマネジメントについて

濱田:私立恵比寿中学さんは、2009年から活動を始め、藤井さんはまさにそこからアイドルに関われたという事ですよね。それ以前、スターダストでのご担当は営業だったとか?

藤井:そうですね。前職ではマネージャーをしていたのですが、2007年にスターダストに入ったら、マネジメントではなくまず営業という指示でした。
営業をしていくと、そのうち「絶対に良い」仕事の話しがあっても、マネージャーの許可がないと…というリスクを感じていきました。やっぱりスピード命じゃないですか。例えば、テレビ局行って話しをして、そこからマネージャーに持っていって…ってなると時間もかかるので、やはりその場でジャッジできたほうがいいな、と思うようになりました。
この経験から、マネージャーは“営業も含めた全部が仕事”だと考えた方がいいと思っています。変な話、僕は、マネージャーだけで私立恵比寿中学株式会社をやっているもんだと思っているんです。営業だろうが経理だろうが全部すべきだと思っていて。

濱田:なるほど。そして、営業経験の後に、すぐにアイドルのご担当になられたのでしょうか。

藤井:まず、僕が今も所属している芸能3部に配属になって、小学校5~6年生とか中学生とか担当がいない子10人ぐらい、ごそっと担当になりました。そのうち、ももいろクローバーを始めた上司から「私立恵比寿中学っていうグループを作るから、お前担当しろよ」と話がありました。実はその時、一度お断りしたんです。

濱田:そうだったんですね!

藤井:そうしたら別のマネージャーがついたんですけど、そのマネージャーが1年間大阪に行く事になり…。さらに、僕の担当アーティストがいなくなって、その結果エビ中をやることになったんです。

濱田:そうなると、完全に藤井さんご自身もエビ中さんについて「一から勉強」ですよね。

藤井:当時、エビ中の子達は小学生から中学生ぐらいでしたけど、やっぱり社内でもアイドルのマネジメント、運営は“イロモノ扱い”だったんです。エビ中の衣装を持ってコインランドリー行った時も、変態みたいとか言われましたし(笑)。その頃エビ中は十数人いて、それを僕1人でやっていました。そもそも皆、アイドル活動ではなく「レッスンの一環だから」って集められたんですよ。だから、最初はアイドルをやる気持ちがなく、部活みたいな感じでしたね。

濱田:なるほど。メンバーの集め方は、最初期の頃はどうなさっていたんでしょうか?

藤井:実は、最初は上司が集めてくれていたんです。なので、グループが出来上がっている状況で僕は任されました。そのあとは僕のほうでも新メンバーを考えてきました。

濱田:様々なルートで皆さんメンバーになっているのだと思いますが、運営上どういうところに気をつけてやっておられるのでしょうか?

藤井:例えば、最初の頃は、「女優志望で芸能事務所に入れさせたのに、いつのまにかアイドルやらされてる!」って思っているご両親もいました。まだ仕事がないタレントが、女優を目指したレッスンの一環だと思ってグループに入ったのに、ある日突然「レッスンのつもりでタラタラやってんじゃねーよ!」って僕に怒られるわけですもんね(笑)。それは、「メジャー契約するから頑張ろうね」って話をして、わかりましたって言ってくれたんですけども。それでも、「やっぱり女優さんになりたい」って辞めてしまう子もいました。アイドルって本当大変なんで…。

濱田:見た目は華やかですけど、そのためのレッスン量はものすごいですからね。

藤井:ええ。見えないところの努力が多いですし、単純に仕事量も多いですから。

濱田:初期の頃から、エビ中さんは、ファンとのコミュニケーションのとり方がとても面白いな、と思っていました。例えば職員会議(スタッフによるトークイベント)など、マネジメントスタッフの顔出しも結構なさっていますが、これはどういった経緯でしょうか?

藤井:最初、エビ中って「サブカルに特化したサブドル」と言ってました。ももクロのやっていることの逆張りが始まりだったもので。
そういうことを演出する為に、「40歳ぐらいで妻と子供が2人いる」という僕自身の設定がありました。大きな発表の時にステージに立ったりもしました。普通は、ファンへの連絡や発表をすべてアイドル本人の口からするわけじゃないじゃないですか。ですので、最初はすごく怒られたというか、お客さんにも「お前なんか見たくない」とか言われて(笑)。Twitterとか見ると、僕だけは嫌いだって言う人もいますけど(笑)。
でも出続けると「あいつが藤井だ、校長だ」って認識されるじゃないですか。認識される事で、ただのお知らせの文言にも説得力が出てくるんですよ。「一応、運営の長が言っているのか」って認識もされるので、顔出しして良い事もあるんだなって思いましたね。

あとは去年、テレビのバラエティ番組で「マネージャー大相撲」という企画があって、スターダスト代表で出たんですよ。2回戦で負けましたけど(笑)。少しでもエビ中のためになるのであれば、と出演したんです。それがきっかけで大物タレントさんにエビ中を見てもらえればっていうのもありましたし。エビ中が広まるなら、相撲だってとりますし、なんでもやりますよ(笑)。

濱田:素晴らしい(笑)。
ももクロさんやエビ中さんではじまったスターダストさんのアイドルは、今では芸能3部さん内だけでなく、芸能2部さん、大阪や名古屋、福岡、東北など大きな勢力になっておられますよね。
スターダストさんの各グループは、時に関連性を感じないほど、個性的なクリエイティブも多いように思います。これを藤井さんはどのように考えておられますか?

藤井:例えば、たこやきレインボーは担当マネージャーが女性で、女性ならではのクリエイティブをやっているのだと思います。
また、ももクロ、チームしゃちほこ、ばってん少女隊のマネージャーは皆プロレスが好きでその要素が入っているようですが、僕はプロレスのエッセンスを1ミリも取り入れてない(笑)。
例えば、スカが好きなマネージャーはその路線で攻めたいっていう想いで、そういう楽曲が多いとか。
いぎなり東北産のマネージャーは、今やりたい事を爆発させてやっていると思うので、面白い事やっているなって感じですけど(笑)。グッズでセリ帽を作ったりとか(笑)。
考えてみると、スターダストは1マネージャーの裁量が大きい会社なんだと思うんです。今となっては僕の上司も会議に出る事もないですし。

濱田:なるほど。ちなみに、藤井さんご自身は、クリエイティブについてどうお考えなのでしょうか。

藤井:僕は自分がものすごくアイディアマンだとは思った事がなく、適材適所で人をはめるのが得意なので、そういう面白い事が得意なマネージャーがいれば全面に出してあげる。他グループとはそういうところで違いが出ていると思います。




▼藤井氏が考える、アイドルシーンのこれから、私立恵比寿中学と桜エビ〜ずのこれから

濱田:藤井さんは本当に黎明期の頃からアイドル界に関わられているわけですけど、「アイドルシーンはこうなっていけばいいのに」と思う事はありますか?

藤井:僕としてはアイドルシーンを「J-POP化したい」と思っています。

世の中の皆さんに「まだアイドルに対して偏見はありませんか」、という事を問いたいんです。アイドルは 1ジャンルとしては確立しているんですが、アイドルソングを聴いている事を憚られるというか、後ろめたい部分が無くなればいいなというのがあります。
一般の方にとっては、子供を応援しているとか、そういった印象が「足かせ」になっているんじゃないかなって思うんです。僕が大学生ぐらいの時にはヴィジュアル系を聴いていたんですが、「何聴いてるの?」って質問に、格好つけて「洋楽」とか言っちゃってたわけですから(笑)。

濱田:なるほど(笑)。桜エビ〜ずさんは他の事務所さんのグループの曲とかもかなり歌われたりしていますし、そういった(J-POP化に向けた)試みを実践されているんですね。

会場:アイドルがどうしたらJ-POPになるのか、何かお考えはあるのでしょうか?

藤井:エビ中は、すごい方々に楽曲を書いてもらったりしているので、充分普通のJ-POPとして歌ったりしているんですけど、でもそれがそのまんまアイドルの皮をかぶって歌っているとJ-POPにはならないという話しなので…。一番良いのは、木村カエラさんが「Perfumeが良い」って言ったみたいに、自分たちじゃない人に見つけてもらって言ってもらうこと、そうすればJ-POPとして広がっていくんじゃないかなって思っているんです。

会場:そうすれば、アイドル好きでなく、一般の人が「このアイドル好きだよ」って言っても恥ずかしくないようになる、という事でしょうか?

藤井:そうであればいいなと思っています(笑)。

とにかく、もっとアイドルと他の「J-POPとの壁」が無くなればって思うんです。そういう偏見を取っ払って、普通に聴けるような楽曲もたくさんあるはずなんですけど、シーン全体がそこまで進めていけていないんじゃないかなっていうのが僕の考えです。 いうなれば“アイドル=萌え”っていうのを全部取っ払いたいと思っているんです。

AKB48グループさんとかは「アイドルなのに~」って言われる事は無いと思うんですけど、僕らは「アイドルなのに」、“なのに”が必ず付くんです。とにかく「アイドルなのに何かしている」とかそういう切り口が多い。ただ、それがフックになって跳ねる要素も勿論あるとは思いますけどね。BABYMETALさんなんかは“アイドルなのにメタルをやっている”とか、そういうこともあったりするので、一概に全てを否定しているわけではないですけど。

濱田:なるほど。
現在、アイドルシーンは、外部の方から見たら、かなり盛り上がっているように見えているようですが、どうお感じになっていますか?

藤井:ちょっと前、アイドルバブルみたいな時期があったと思います。その後に芸能プロダクションじゃない方もアイドル運営を始めて、そこから少し落ち着いて淘汰もあったりして、今は去年よりも落ち着いた感じはありますけど。
タレント達のためにどこまで考えてやっているのかなって思います。

濱田:藤井さんの元には色んな業界からお仕事などの依頼が来たりすると思いますが、どういう基準でお付き合いするしないを判断されているんでしょうか?

藤井:僕はいつも、「この子達が将来何になりたいか」って言うのを考えています。僕は、「アイドルは何でもできる」と思っていて。その為にはアイドルに付加価値をつけていかないとって思います。けれど、やっている本人達は気楽な気持ちでやっている子も多いので、そうなると中々上手くいかなかったり…。
あとは、彼女たちが「芸能界でご飯を食べていく」ために、っていう事を考えているのに、アイドル業界変な人とか多いじゃないですか(笑)。

濱田:(笑)。

藤井:それに、「良い」って言ってくれる人はたくさんいますけど、“本当にそう思っているか、どうなんだろうか”って感じるじゃないですか。何が具体的に良いかって自分でもわからない人もいると思いますが…

逆に、僕らでも知らないような細かいところまで見ている方とか。そういう人はちゃんと見ていてくれるんだなって思います。

「アイドル好き、エビ中好き」って言って15公演中10回公演に来るとか、熱量をすごく感じるスーパープロデューサーの方もいます。エビ中が2012年にメジャーデビューして、そのときレーベル経由で紹介してもらったんですけど、目もあわせてもらえなかったですからね。それがある日突然「エビ中めっちゃいいですね!」って話しかけられ、それからなんです(笑)。

濱田:そういう熱量的な「もの」が違う人に会うと、感動しますよね。

藤井:その部分は大きいです。エビ中だけでなく、本当にめちゃくちゃライブも見ていると思いますし、だからこそすごく説得力もあるのかなと。

濱田:藤井さんとしては、お付き合いしていく相手の方の見極めが大事なわけですね。

藤井:こっちは真剣ですからね。

濱田:最後になりますが、ご担当アイドルの今後、まず、桜エビ~ずさんは、今後はどのような方向性なんでしょうか。

藤井:桜エビ~ずは、“脱・スタダアイドル”を掲げています。色分けとか、元気いっぱいとかそういうのは取っ払っています。今って、モノノフ達(ももクロファンの呼称)のおこぼれをどのアイドルグループも欲しいと思っているはずなんですね。それを待っているだけじゃどうしようもないですし、同じところで食い合っていたら会社の利益にもなりませんし。

濱田:(笑)。エビ中さんは今後どういった方向に向かうのでしょうか。

藤井:エビ中をもっと売りたい。いつもそう思っています。

会場も、さいたまスーパーアリーナの上だとドームクラスしかなくて。特に、東京ドームを満員にするのは難しいじゃないですか、どう考えてもアイドルファン以外に売らなきゃいけない。
狙うターゲットを明確化して、そのターゲットに向けた楽曲をJ-POP風に作って売っていきたいなと。
CDを発売すれば、必ずオリコンの順位に入れなくちゃと思っていますが、CDの売り方はやり方が変えられていないので、それを今後どうしていくかっていうのが課題です。
そして、個人仕事はいっぱい入れたいと思っています。どんなに小さい仕事でもその子がやりたいって言えば入れてあげようって。個人仕事すると、本人も喜び、新しい人にも見てもらえるので、入れられるだけ入れたいですね。

2017年はあまりにも大変な事があり、そして今後も大変な事はあると思います。問題は山積みですが、1個1個解決しながらやっていくしかないかなと。

年単位で考えるだけではなく、個人個人の将来を考え、最終的に芸能人として食べていける子になってくれればいいなと思っています。




<アイドルLOUNGE>
https://lounge.dmm.com/detail/186/

<過去のアイドルLOUNGEのレポートなどはこちら>
http://lopi-lopi.jp/media/335/

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